<令和4年4月からパワーハラスメント対策が義務化されています>
厚生労働省によると、都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加し、平成24年度には相談内容の中でトップとなり、その後も増加しています。そして、コロナ禍においても、パワハラをはじめとするハラスメントの相談件数は引き続き増加傾向にあります。
このような中、職場におけるパワーハラスメント(以下「パワハラ」といいます。)対策が、令和4年4月1日から中小企業でも義務化されています(なお、大企業については、令和2年6月1日から義務化されていました。)。
<パワハラ防止措置>
中小企業の事業主が取り組むべきパワハラ防止措置とは、どのようなものがあるのでしょうか?
厚生労働省のパワハラ防止指針に示されている措置は、以下の10項目です。
<具体的に何をすれば良いの?>
義務化のポイントは、以下の2点です。
(A)ポリシーの周知(ハラスメントを防止する方針の周知)
(B)救済へのアクセスポイント(救済へのアクセスを可能にする相談窓口の設置)
この2つのポイントから、事業主が具体的に何をすれば良いのかを考えていきましょう。
まず、(A) ポリシーの周知とは、会社として「パワハラをはじめとするハラスメントを防止する」という基本方針を作成し、従業員に伝えていくことが重要です。
次に、(B) 救済へのアクセスポイントとは、ハラスメント事案が発生した場合の救済方法を事前に定めておき、それを従業員に伝えていくことです。
先ほどの①から⑩までのパワハラ防止指針の措置項目を(A)と(B)の2つに分類すると以下のとおりになります。
<(A) ポリシーの周知>
事業主としてまず行うべきことは、「パワハラをはじめとするハラスメントを防止する」という基本方針を従業員に直接伝えることが重要だと思います。その際、②パワハラなどには厳正に対処する旨、従業員がパワハラなどの相談等を行った場合には⑨プライバシーは保護する旨及び⑩不利益な取扱いは絶対に行わない旨を明確に伝える必要があります。
また、単にパワハラを防止するというだけではなく、この機会に会社の経営指針を従業員に伝え、経営指針の実現のためにもパワハラを防止し、より良い職場環境を目指す旨を伝えるのが望ましいです。
その後、就業規則などの諸規定を整備し、より実効的にパワハラ等のハラスメントへの対応を行いましょう。この点、厚生労働省がモデル就業規則を公表していますので、これを参考に作成するか、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談するのが良いと思われます。
<(B) 救済へのアクセス>
ポリシーの周知とともに、事業主としては、パワハラ等の事案が発生した場合の③相談窓口を設置し、④適切に対応し、⑤事実確認を行うとともに、⑥被害者及び⑦行為者への措置を講じ、⑧再発防止策を講じる必要があります。
相談窓口の例としては、以下の3つの方法が考えられます。
- 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
- 相談に対応するための制度を設けること
- 外部の機関にあらかじめ対応を委託すること
例えば、中小企業の社長を担当者として、従業員に電話番号やメールアドレスを周知するという方法があります。また、外部に委託するということであれば、社会保険労務士な弁護士に相談窓口としての役割を依頼し、従業員に対しては、当該専門家の事務所の電話番号やメールアドレスを伝えておくという方法が有効です。この点、パワハラ等のハラスメントの事実に関する確認は、専門家の関与が望ましいため、相談窓口も社会保険労務士や弁護士といった外部の専門家に依頼するという方法が良いのではないでしょうか。
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